レンズ越しの鼓動




「も、もう。
からかうのはやめてください!
いい加減にしないと私も怒りますよ!」


「俺がこれだけ言ってやってるのに、
わからないってどういうこと?
瀬戸さんは正真正銘のバカなの?」



私が少し声をあげてみても、
相田さんは変わらず無表情で、
淡々と話す。
それどころか、
少し不機嫌そうな表情を浮かべ、
久しぶりの毒舌を発揮する。


……突然、意味のわからない告白をされて、
挙げ句、バカ呼ばわりされて、
それでも嫌な気がしないのは、
もうすでに私は、
相田さんの罠にまんまとはまっているからだ。


「……皆さん、見てるんですけど。」


「なにそれ。
今それ関係ある?」


「大いにあります!」


周囲を無視して繰り広げられる私達の掛け合いに、興味津々という様子で見ていたスタッフさん達も、時々私達をからかうようなことを言って、次第に笑顔になっていった。


……本当に、恥ずかしすぎる。
でも、なんだかおかしくて、笑えてきた。

本当におかしい。
会って1ヶ月も経ってないのに、
こんなにも心臓がうるさいなんて。
何かの間違いだ。
でも、認めざるを得ない。
だって、もう、
レンズ越しの相田さんに聞こえてしまうんじゃないかってくらい、心臓が叫んでる。