レンズ越しの鼓動




「え……っ。」


「いくら、おバカなあんたでも、
これくらいわかるよね?」



相田さんが放ったその言葉に、
口が開いて閉じなくなった。

カメラを構えているせいで、
相田さんの表情がわからない。



……なに、急に。
なにそれ。


たった一言。
その一言で、一瞬にして、
顔に熱が集中するのがわかった。



「あ、その顔いい。」


真っ赤な顔をしているであろう私を、
淡々と撮っていく相田さん。


……全然わからない。
相田さんが何を考えてるのか。
でもたぶん、私は今、
このたちの悪いカメラマン様に、
まんまとはめられた。


「もう!
こんな時にそんな冗談言うのやめてください!」


いい表情を撮るために、
ってことだろうけど、
カメラマンとして当然のことだろうけど、
それで言ったんなら、本当にたちが悪い。


「何誤解してんの?
嘘でも冗談でもない。

仕事を断られても、
俺に何度も連絡してきたの、
瀬戸さんが初めてだったよ。


……純粋に会ってみたいと思った。
あんたは俺のそんなむき出しの下心に、
なんの疑いもなく無邪気に喜んでたけどさ。」



スタジオには私と相田さんの他に、
大勢スタッフさんがいると言うのに、
なに食わぬ顔で話を続ける相田さん。


そんな相田さんに周りのスタッフさんたちは、
何のことだかわかってない様子だったけど、
それが、大胆すぎる愛の言葉だということは、
なんとなく察したようで、興味津々に私を見ている。