レンズ越しの鼓動




「じゃあ、再開します。」


スタッフさんのその号令と共に、
和やかだった空気が一転し、
皆プロの顔になる。

私ももう足は引っ張らないと心に決めて、
カメラの前に立つ。


それでも、レンズ越しの視線を感じると、
どうしても緊張してしまって、
動きが固くなってしまう。


……大丈夫。
肩の力を抜いて……


そう心掛けても、
なかなかうまくいかない。


せっかく相田さんが励ましてくれたのに。
……こんなの、私が、こんなことしてたらまた…


そう考えると、無意識のうちに、
視界がにじんできてしまう。


「言うの忘れてた。」


「え……」


そんな私を見て相田さんがぼそっと呟いた。


「瀬戸さん、俺ね、
美しいものしか撮らないの。」


「え……あ、はい。
存じております。」


いつかの日のような会話をする。


「俺は、美しいものしか撮らない。
ついでに言うと、好きなものしか撮らない。
そんで、俺は今あんたを撮ってる。

この意味わかる?」