「まあ。まず良かったねー。もう男を知らないまま化石にでもなるかと思ったよ」

「化石って」

「だって、なつめ、今までが今までだったから。なんていうの、年中、仏像掘ってそうな感じ?で、どうなの?したの?したの?」

「え?」

「キスはした?」

「したよ」

「どうだった?」

「どうって。聞く?それ?面白がってない?」

「うん。すっごい面白いもん。いいなあ。今がいちばん楽しいよね。幸せ者」と、からかわれてしまう。

「そういう澄美はどうなの?最近?」

「ないない。何もない。あたしは写経でも始めてしまいそうなくらい、無だよ」と、深い溜め息をついてから、煽るようにグラスの残りを飲み干す。

何か思い出したように、「あ」と呟いた。

「そういえば、この前、見てはいけないもの見ちゃったんだよね」