しばらくして、蒼介が美華に甘えてるのを見た私は、みんなに挨拶をすると席を立ち上がった。

そして、1テーブルずつ回り挨拶をした。

私はホントに恵まれてると改めて思う。

最高のスタッフと最高の客に囲まれて仕事が出来るのだから…。

改めて、講師の仕事気張ろうって強く思う。

けど…それが裏目に出ないように心がけないと!

挨拶回りを終えて何とかバックヤードに戻れた私はソファーに崩れるように座り込んだ。

「大丈夫ですか?お疲れさまです。水どーぞ」と飛鳥は言って水を渡す。

私はその水を一気に飲み干した。

くぅ~胃に染みるぜ!!(笑)

蒼介は完全に美華にベッタリで、周りを寄せ付けない異様な空気を出してる。

果たしてそれは良いことなのか、悪いことなのか…よくわからないが…

蒼介のことを受け入れて大事にしてくれてる美華、たくさん入れてくれてるし、問題は無いだろう…。

って私の勝手な判断かな…?(笑)

まぁいい。そんなこと気にしてられない!!

それより、龍は…?

辺りを見渡すが龍はいない…

うん?ってあれ?表出てたかな~?見た記憶無いんだけど…

「お疲れさまです」と急に現れた龍に体は思わず反応してしまった。

ビクッー

「そんなに驚かなくても…」と笑ってる龍。

こらー思わず怒りそうになって止めた。

疲れるから。って龍!!顔近いよ!

今にもキスされそうな顔の近さに思わずドキッとする私。

「オーナー?顔赤くない?」って嫌みっぽく言う龍。

こいつ、マジでやってやがる。

いい度胸だ

「それがどーしたよ?あんたが顔近づけすぎるからだろ?」と言ってやった。

ふっ、どーだ!って別に威張ることじゃないよね…。

「ふーん?ドキドキしてくれたんだ?」と更に迫ってくる龍…

私が抵抗できず逃げられないの知ってて…そうしてくるわけ?

ちょっと性格悪いんじゃないの?

「私いじめて楽しいわけ?」と言ってやれば、

「蒼介とオーナーにだけだよ!こんなことするの」なんて笑顔で言ってきやがる。

マジほんと…こいつには敵わない…

「そう。じゃあ私愛されてるんだね」と私は笑ってやった。

今度は龍が顔を赤くした。

「好きだよ…」って迫ってくる龍の声はどこか少し震えていた。

熱く熱のこもった息が顔にかかる。

体は跳ねそうになる。

そこに勢いよくバーンとドアが開き、寸止めされてしまった。

私は軽く舌打ちし、ドアの方を見る。

蒼介だったー

「二人とも何してんですか!?俺が必死で仕事してるときに…」と蒼介は言って近づいてきた。

そして、強引に龍を私の前から引き離すと、にっこりを笑って、

「店長ばっかずるいです。俺だってオーナーのこと好きなんですよ?」と言った。

二人の間には火花が散っている。

そこで飛鳥はひとつ咳払いをして、「みんな仕事戻ってください」と言った。

私はそうだ、飛鳥はずっといたし、見てたんだよね…と思うと急に恥ずかしくなり、顔から火が出そうなくらい赤面した。

龍は…ケロッとしていた。

「で、まだ終わってないのに何でお前がここにいる?さっさと表出なよ」と龍は言う。

蒼介はかなり複雑そうな顔をしていた。

「蒼介、後でゆっくり話そう?」と私が言えば、笑顔で「じゃあもう一踏ん張りしてくる!!」と言ってバックヤードを出ていった。