アラビアンナイトの王子様 〜冷酷上司の千夜一夜物語〜




 それぞれ着替えて、ダイニングに行くと、朝食が三人分、用意されていた。

「桜田さんっ」

 珈琲だけじゃなかったのかっ、と思い、感激の意思を込めて、その名を呼ぶと、桜田は、
「お前ら、どうせ、いつも朝適当なんだろう。
 朝はしっかり食べてけ」
と言い出す。

「どうしたんですか、桜田さん。
 どっかのマイホームパパみたいですよ。

 お父さんみたい」
と祈るように手を合わせて言うと、通りすがりに、阿呆か、と頭を小突かれる。

「見たい番組があるんだ。
 テレビ見ながら食べよう」
とカウンターから料理をテレビの前のテーブルに運び始める。

 やっぱり、お父さんじゃない、と思った。

 普通、子供に、テレビを見ながら食べるのやめなさい、とか言わないだろうか。

 自分から率先して見せるとかどうなんだ。

 そんなことを考えながら、遥人と一緒に皿を運ぶ。

 桜田と朝の番組を見ながら、三人で食べた。

 なにを見たいのかと思ったら、占いのコーナーのようだった。

「辰巳遥人、お前、なに座だ」
としょうもない世間話を遥人と始める。

 遥人の桜田に対する態度はかなり軟化していた。

 そのうち、二人だけで話しだしてしまうが、なんとなく嬉しかった。