君の隣でクリスマスを祝う

「クリスマスイブの日、僕は親に捨てられた。どんなに待っていても、迎えなど来なかった。小説家になり世間に認められ、街中に僕の本が溢れても、誰も親だと名乗りを上げなかった。そこでやっと、諦めがつきました。僕は漸く待つことから解放された」

 日向の告白に胸が軋む。絶望で凍えた日向の手のひらがぬくもりを取り戻すことは、もう二度とないのかもしれない。


「去年のクリスマス、仕事だと言ったのは嘘です。僕はどうしても、自分が捨てられた日を祝うことができなかった」

 我慢できずに零れ落ちた涙を、日向の冷たい指先が拭う。私は彼の手を取り、頬にあてた。

「今まで黙っていて、すみませんでした」

 濡れた頬に触れたまま、日向は私に頭を下げる。私は彼の手を両手で包み込み、大きく息を吸い込んだ。

「お願いだから……謝らないでください」

 日向の嘘は、自分を守るための嘘だ。罪はない。


 ――もし彼が、私との未来を望んでくれるのなら。

 きっと、私にしか出来ないことがある。