車の窓越しに流れてゆく風景の中に、仲良さげに腕を組み歩く恋人達を見つけた。

 クリスマス……イブの夜を一緒に過ごしたいと言ったら、日向は何と答えるだろうか。

「あの、年末年始はお休みを取られるんですか? ご実家に帰られたりとか……」

 一人で積み重ねてきた年月と共に芽生えた小さなプライドが、素直な気持ちに蓋をする。

 クリスマスに拘るなんて、子供染みていると彼に思われないだろうか?

「休みは……どうでしょう。誰かさんのおかげで予定外の仕事が入ってしまいましたので」

「ご、ごめんなさい」

 今年こそ秋口から長めの休暇を取るつもりだった日向に、無理やり仕事を引き受けさせたのは私だ。

 担当する文芸誌の主力作家である日向に長く休まれるのは、我々にとって痛手以外の何物でもない。