一年生からヤジが飛ぶ。 もう棄権してしまおうか。 そう思ったとき。 「走れ!律花!」 悠斗の声が聞こえた。 応援の声がたくさんあるなか、とてもクリアに。 今度は悠斗が叫んだことで、女子が騒がしくなった。 ────そうだ。 まだ悠斗にバトンを渡していない。 悠斗がまっすぐ私を見る。 フラフラと立ち上がる。 所々が擦りむけて痛い。 口のなかは砂の味がする。 それでも渡さなきゃいけないと思った。 ほぼ歩いているような速度で悠斗が待っているところへ向かった。