少し違和感を覚えつつも、少し隠れて見ていると楓菜は少しうつむき、ありがとう、と1人で呟いた。


すごく優しい顔で。


「楓菜!!!」


俺はそれを見て、思わず飛び出した。


俺も見たことない、そんな楓菜の顔。


それがなんだか悔しかった。


「あ、あやと?どうしたの?」


びっくりした楓菜の表情。


「楓菜…お前さっきのやつと付き合う、のか?」


「え…」


「どうなんだよ」


いきなりの言葉に躊躇う楓菜を急かす。


だけどそれは逆効果で楓菜は「あの…その…」と口ごもった。


答えない、ってことは肯定だってことだよな?


あいつと…付き合うことにしたんだな…


あいつの表情を思い出す。


たぶんあいつもずっと楓菜のこと好きだったんだ。


ずっとずっと楓菜のことを見てきたんだ。


だけど…俺だって…


大きなため息をつきながらその場にしゃがみ込む。


「綾人?」


俺に声をかける楓菜のブレザーの裾を少し掴んだ。