【綾人side】


長い長い終業式が終わり、下足室へ向かう途中、ふと窓の外を見ると楓菜が知らない男と校舎裏にいるのを見かけた。


なんとなくいやな予感がして、その場で立ち止まる。


「………覚えてる?」


「………るよ。………りだね。」


距離が遠いためか、途切れ途切れにしか内容が聞こえてこない。


できるだけ聞こえるように窓を開けた。



「…柏木さ………と好きなんだ
1年……ずっと…」


「……ありがとう。」


楓菜より少し背が高い男が真っ赤な顔をして、伝えた言葉に楓菜はゆっくり頷いた。


ドクン、と心臓がいやな音を立てる。


俺は思わずそこからカバンを捨てて走り出していた。


「はぁ…はぁ…」


息を切らしながら校舎裏へと向かうと、楓菜が1人、ぽつんと立っていた。


あれ?「ありがとう」ってことは楓菜とあいつは付き合ったんじゃないのか?


なのに男の方はもういないのか?