「あっ、柏木さん顔上げて」
渡辺くんの言葉に顔をあげる。
「僕の告白にそうやって応えてくれてありがとう。
君を好きになれて、伝えられてよかった」
そう言って笑う渡辺くんに胸が痛くなる。
悲しい笑顔だって、わかったから。
「好きな人とうまくいくといいね。
応援してる。じゃあ、ね」
渡辺くんはそう言うと私に背を向けて走り出した。
「渡辺くん!!!ありがとう!!」
渡辺くんの背中に叫ぶと、振り返らず右手をひらひらと振ってくれた。
顔を赤くして想いを伝えてくれて渡辺くん。
最後のじゃあね、と言った声が震えていたことに私は気づいてしまった。
傷つけてごめんね…
「ありがとう…」
私はもう一度小さく呟いた。
完全に冷えてしまった体をさすりながら、教室へ戻ろうと歩き出す。
「楓菜!!!」
すると、後ろから名前を呼ばれた。

