「それで、話って?」
本題を切り出すように促すと渡辺くんは一度俯いた。
カーディガンの袖をぐっと強く握ると力強く顔をあげた。
「僕…柏木さんのこと好きなんだ。
1年のときからずっと…
よかったら僕と、つ、付き合って、くれないかな」
顔を赤くさせて想いを伝えてくれた渡辺くん。
きっとすごく勇気を出してくれたんだよね。
「……ありがとう。
渡辺くんの気持ちはすごく嬉しい」
一度、言葉を止める。
今から言うことが渡辺くんを傷つけることになる。
どうしようもないことだけど躊躇われた。
…でも、伝えないと。
「…私ね。好きな人がいるんだ。
ずっとずっと前から好きな人。
だから渡辺くんとは付き合えない。
……ごめん、なさい」
そう言って頭を下げる。
「…そっ、か」
渡辺くんの声はすごく静かで少し震えていた。

