「好きでもない男にキスされて嫌だったよな…
ほんとごめん」
違うの。嫌だったんじゃない。
伝えたいのに、言葉にできない。
「……今から言うことは忘れてな」
山川先生はあたしの腕を引き、抱きしめた。
「俺、蒼井のことが…好きだ…!」
悲痛な心の叫びが声となってあたしに届く。
「……………え?」
突然の告白に驚きが隠せず、まぬけな声を出してしまった。
だって、そんな、山川があたしをなんて。
「ごめん、このことは忘れてくれていい。
ほんとごめんな」
あたしをそっと離し、そう言い残して理科準備室を出て行こうとする山川を後ろから抱きしめた。
「蒼井!?」
白衣から薬品の匂いがする。
自分でもびっくりな行動に山川はわかりやすく動揺してくれた。
「…あの、えっと」
ただ引き止めたい一心で抱きついたけどここからどうしたらいいかわからない。
ど、どうしよう…
「………………」
「………………」
あたし達の間に沈黙が流れる。

