『ばか楓菜!!歩くのおっせえ!』
『うるさい!!ちびのくせに!!』
いつもなにかしら綾人が絡んできて、私も言い返す。
それが当たり前だった。
みんなで並んで帰っていてもだんだん誰かが途中で抜けていって、いつも最後に残るのは綾人と私だった。
『楓菜!おにごしながら帰ろうぜ!』
『えー、絶対楓菜がずっと鬼じゃん』
2人になったらいつも鬼ごっこをしようと言い出す綾人。
当時の私は足が遅くて鬼ごっこが嫌いだったけどいつも綾人が鬼になってくれた。
『待てー!』
『やだ!!』
ちょっと遅く走って私に追いつかないようにしてくれて、そのさりげない綾人の優しさに私はいつしか綾人のことが好きになっていた。
帰り道の鬼ごっこは、2人だけの特別な時間だった。

