ゆっくりと私の腕から手を離す綾人。
そして目を見て照れくさそうに言った。
「……久しぶりだな、楓菜。」
あの頃の…私の大好きな、あの笑顔で。
鼻の奥がつんと痛くなるのをぐっと堪える。
「ひ、ひさし、ぶり」
かみかみの私に綾人はまた笑った。
「緊張しすぎ。
変わってねーな、そういうとこも。」
一緒に帰ろうぜ、と言って歩き出した綾人。
私はなにも言わず、綾人の後ろをついていった。
「家変わってねぇ?」
「うん、引っ越してないから」
お互い、なにも言わず黙って並んで歩いた。
何故だか沈黙も気持ちよくて。
このまま家に着くな、と思った。
一生、この時間が続けば──。
学校から私の家までは歩いて15分くらい。
あっという間に家に着いてしまった。
「ありがとう、綾人」

