「びっくりした。勘違いするところだった」
勘違いしてください、なんて言えるわけもなく。
そのまま、渡辺先輩とは別れた。
☆
翌日。
いつもと同じように図書室に行くと、いつもと同じようにやっぱり渡辺先輩がいて。
もう話すこともないんだろうな…
ほんと昨日のことが夢みたい。
「あ、昨日の」
ひとり落ち込んでいると、渡辺先輩が私に気づき、声をかけてくれた。
「そういえば昨日、名前聞いてなかったよね。
僕は渡辺千冬。君は?」
「藤崎…香音です…」
「香音ちゃん。よろしくね」
そう言いながら、手を差し出す渡辺先輩。
少し戸惑いながらも手を握った。
意外と大きな手が私の手を包み込む。
心拍数が上がる。

