【香音side】


彼を知ったのはいつからだろう。


いつも図書室にいる先輩。


友達と一緒に来ていた図書室も先輩の存在を知ってから、1人でも毎日来るようになっていた。


図書委員で毎日図書室に来ていて、当番じゃない日もよく手伝いをしている。


私が知っているのはそれぐらい。


学年は上履きの色から、名前は名札から知った。


黒髪で男の人にしては背が低め。


3年生の渡辺先輩。私の好きな人。


「香音!そろそろ戻ろ?」


友達のさっちゃんに声をかけられ、私は読んでいた本を借りて教室に戻った。


授業開始のチャイムが鳴り、私は窓側の自分の席に座った。


ピッという音がしてなにげなく窓の外を見ると、男子が体育をしていた。


その中に渡辺先輩を見つける。


渡辺先輩のクラスなんだ…


寒いのか渡辺先輩は袖の中に手を隠してこすり合わせている。