「…ちょいと、昔話でもするか」 振りかえれば、 まだ半分以上残った煙草の火をもみ消して、珍しく真面目な顔をしていた。 「…ある男がいた。」 「そいつは、なにも持ってなかった。夢、希望、自分が生きる意味……、未来を夢見るようなものは、なにひとつ…持ってなかった。」 それは、まるで、俺だ。 「……そんな奴があるひとりの女に出逢ったんだ。」 胸の中、ドクンッと動く。 ぎゅうと胸が押し潰されて、苦しくて、なんだか呼吸がしづらい。 それをどうにか紛らわせたくて、ポケットに手を入れた。