ぐっと握りしめた手には、もう冷たさしか残っていない。 ふと、記憶の中に残る温もりが、恋しくなって…。 無意識に、探してしまう。 あの、温かい手が恋しい。 ―――でも、その手を離したのは、自分だ。 幸せを願うはずなのに、“あいつ”のことばかり思い出してしまう自分が、女々しくて情けない…。 はあ、と長い溜め息を吐く。