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昼休みが終わる5分前、あたしとカナミは教室へと戻ってきていた。


教室へ入った途端、ツバサ君が教卓の前に立っているのが見えて嫌な予感が胸によぎった。


「月乃、やばいよアレ」


今朝ツバサ君の話を聞いていた1人のクラスメートがそう声をかけて来た。


「どうしたの?」


「ツバサ君、月乃が1人で寂しそうにご飯を食べているから、一緒に食べてあげたんだってクラス中に言いまわってたんだよ」


その言葉にあたしは一瞬めまいを覚えた。


たったあれだけの事でそこまで舞い上がるなんて、ツバサ君は相当女子にモテないのだろうか。


「月乃、大丈夫?」


めまいがしたあたしを心配してカナミが言う。


「大丈夫だよ。ちょっと呆れて気分が悪くなっただけだから」


「あ、月乃ちゃん!」


ツバサ君が馴れ馴れしく話かけてくるのを無視し、自分の席に座った。


ちょっとでも会話をすればツバサ君はまたすぐに盛大な勘違いをして、人を巻き込むのだから。


「月乃ちゃんのお弁当って、自分の手作り? すごく美味しそうだったなぁ。俺も食べてみたいなぁ」


ツバサ君はあたしに無視されている事にも気が付かずにどんどん話しかけてくる。


今日のお弁当はコンビニで買ったものだったのに、それにすら気が付いていなかったと言う事は、あたしのお弁当なんて見ていなかったということだ。


それなのに人の気を引こうと平気で適当な事を言ってるツバサ君にいらだちを覚えた。