「ごめん……でも、去年の文化祭であたしが悪者になっていたことは野田さんも知っているよね?」


「……うん」


野田さんは気まずそうに頷いた。


真治の嘘はあたしの気がつかないところでどこまでも広がっているのだ。


「でも、あれは全部うそ。あたし、それをどうしても証明したかったの!」


あたしはそう言いながら、先生たちを見た。


目に涙を浮かべて懸命に訴えるあたしを前に、先生たちは困った表情を浮かべる。


「先生、ごめんなさい……」


うなだれてそう言うと、先生は「もう、いい」と、左右に首をふった。


「悪いのはナ永吉なんだろう? 去年の文化祭で何があったのか、ちゃんと聞いておくから、有川はもう教室へ戻りなさい。


野田は通常の委員会業務を続けなさい」


「はい」


先生の言葉に野田さんは椅子に座り、全校生徒へ向けてさっきの放送の謝罪をし、そして音楽の説明を始めた。


野田さんはとても優秀な委員だ。


鍵を机に置きっぱなしにしてしまったのは、きっとケアレスミスだったのだろう。


人のミスさえも、あたしに味方をするようになっていると言う事だ。


あたしは野田さんへむけて「ありがとう」と、囁くと放送室を出たのだった。