☆NOside☆
瀬戸内家の一人娘・愛が部屋へ向かったのを見届ると、
マナの父はある人物へ電話をかけた。
『あぁおじさん、お久しぶりです』
電話の相手は、過去にマナの父親が担当した事件の被害者。
当時は5歳だった少年も、立派な高校生へと成長した。
少年にしては酷い事件だったため、
当時はまともに話せないほど狂ってしまっていたが、今は笑顔の弾ける良い娘の相手になってくれた。
「本当にありがとう、復讐を成し遂げてくれて」
いじめられ、怪我をし、傷ついた娘のため、父親と娘を愛する少年が考えた、復讐計画。
主犯の須王江里や、その他のクラスメイトを殺害し終え、復讐計画は見事幕を閉じた。
『マナはどうしていますか?
俺が起こした事件のことも、須王江里が亡くなったことも、忘れているように見えましたが』
「ああ…忘れていたよ。
さっき事件のニュースを見ていたが、関心がなかったよ」
『良かった。
マナにプレーヤーを聴かせたんです。
マナが戻りたいと言っていた、過去に戻るために。
あんなに発狂させて…申し訳ないことをしたと思っています』
「マナの記憶を消すために、わざと内容を聴かせたのか」
『そうでもしないと…俺はマナを手放すことになる。
殺人に手を染めた俺が傍にいて守り切るには…
事件そのものを忘れさせる必要があった。
だから聴かせたんです』
機械越しに聞こえるカケルの声は、泣いているように聞こえた。
『俺は、罪を償うべきなのかもしれません。
マナの復讐とは言え、殺人をしたと知ったら、マナは俺を軽蔑します。
だけど…離れて行ってほしくないのです。
だから俺は…間違っている方法だとしても、マナの親友たちを殺した。
マナの記憶は、これからも俺が責任を持って封じ込めます。
またしても思い出しそうになったら、プレーヤーを使います。
それでまた…いじめの辛い記憶を思い出させることで、マナの記憶を消します』
泣いているにも関わらず、カケルの声は力強かった。
ずっと自分が見守り、支えてきた少年。
マナの父親は、我が子を見守るような気分で、ふっと微笑んだ。
「マナのことは、カケルくんに任せる。
今回の事件も、揉み消すとしよう。
揉み消した方が、カケルくんにとってもわたしにとっても、良い結末だ。
カケルくん、これからもマナをよろしく頼むよ」
『お任せください、おじさん。
マナは何をしてでも…俺が守り切ります。
あの笑顔を、壊さないためにも』
「では、これで。
何かあったら、また電話しなさい」
『おじさんも。
では、お元気で……』
父親が、娘を大事に想う気持ち。
彼氏が、彼女を大事に想う気持ち。
暴走してしまったふたつの“愛情”が
もしかしたら
――連続女子学生殺人事件の、黒幕だったのかもしれない。
【END】