☆カケルside☆
俺はマナを離し、音楽プレーヤーを渡した。
マナはその物体を見てすぐに、目を見開いた。
そして誰でもわかる、怯えの色を見せた。
「マナ。聞いてほしい」
「やだっ……」
「知ってるか?マナ。
人って本当に拒否するときは“嫌だ”じゃなく、“やめて”を言うんだ。
“嫌だ”って言うのは、心の中で少し認めているんだ」
「……カケル」
マナは俺のことを、1回もキミやあんたと呼ぶことはなかった。
ずっとその綺麗な声で、1文字1文字しっかり、俺の名前を呼んでくれた。
そんな当たり前のことが、俺は酷く嬉しかった。
「マナ。
辛いだろうけど…聞いてほしい」
本当は聞かせたくない。
だけど…受け止めなくちゃいけない現実も、
この世にはあるんだよ……マナ。