「……悪いけどな、マナ」
ずっと黙っていたカケルが、静かに口を開く。
「もし…あの頃に戻ったとしても、数ヵ月後には同じ今日を迎えていたよ」
「どうしてっ……」
「……マナ、ケーキ食べ終わったら出よう」
振り向くと、いつの間にか店長さんが戻ってきていた。
人がいる前で、話せない。
あたしは、無言で半分のケーキを食べ進めた。
「良かったのか?割り勘で。
俺奢ったのに」
「あの時も割り勘だったでしょ?」
「……懐かしいな」
ぽつり、とカケルが呟く。
「俺が奢るって伝票持ったのに、マナが嫌だって言って。
このままじゃ埒が明かねぇから、割り勘にしようって言ったら、わかったって頷いてくれて。
あの時のマナ、すげぇ可愛かったの、今でも覚えてるよ」
カケルが自分より背の低いあたしを見て、優しく微笑む。
「あたしだって覚えているよ。
かっこよかった、カケルのこと。
忘れたことなんか、ないんだから」
景色も声も気持ちも。
全部全部、眩しいほど、覚えている。


