「……もどっ…り……」
あたしはオレンジジュースのはいった冷たいグラスを両手で抱え、
ぽたぽたと涙を流した。
優しい色の木で出来たテーブルに、涙の雫がこぼれ落ちる。
小さな水たまりが、いくつも出来た。
「……知りたく、なかった」
1人しか働いていないおじさん――恐らく店長は引っ込んでしまった。
誰もいない薄暗い店内に。
あたしの涙声がやけにうるさく響いた。
「あの頃の、ままでいたかった……!」
「……マナ」
「あの時と同じ、あたしたちでいたかった…!」
「…………」
「戻りたい!」
「……!」
「戻りたいよ、あたしっ……。あの頃に」
お互い喋る度に真っ赤になって。
美味しいよってカケルにチーズケーキを「あーん」してあげたり。
「飲めるのか?」って笑われながら、苦い珈琲口に含んだり。
別れ際には、「ばいばい」を言うのが惜しくって。
二度と離さない、と言っていないのにわかるほど、強く抱きしめあったり。
永遠を誓うほど、長い長い、甘いキスをしたり。


