『……マナ』
あの時のカケルは、あたしの名前を呼ぶことに慣れていなくて。
緊張しながら話しかけているのが丸わかりだった。
そう言うあたしも、カケルの名前呼ぶの苦手だったんだけど。
『良い店…見つけたんだ、マナ好みの。
いつか空いている時…一緒に行かねぇか?』
『今日行く?』
『は?
…マナ、用事ねぇの?』
『ないよ。か、カケルは?』
『俺もねぇよ。……行くか』
こわごわ、慣れない手つきで手を握って。
だけどカケルは男らしく、あたしをリードして。
――このお店に、連れて行ってくれた。
後日わかったことだけど、
カケルはあたしを誘う1週間前から、
あたしが好みそうなカフェを調べてくれていたらしい。
カケルが落としたメモに、
あたしが好きだと言ったお店の雰囲気が細かくメモされていて。
だからなのだろう。
このカフェの内装は、あたしの好みに一致している。


