お母さんの最悪な申し出に、カケルは申し訳なさそうに首を振った。
「ごめんなさい。
お気持ちは嬉しいんですけど。
俺、今日マナと一緒に夕飯食べたいなって思ってまして」
……は?
カケルの言ったことが信じられなかった。
「お母様もご存知ですけど、マナは今、エリちゃんを亡くして、
僕たちの想像以上のショックを受けていると思うんです。
僕、マナが放っておけないんです。
ですから、突然ですけど、今日マナと一緒に夜を、過ごさせてもらえませんか?
勿論、ご両親が心配するようなことは一切しません。
だけど僕…マナの傍を離れたくないんです……」
泣きそうなほど、クシャッと顔を歪めるカケル。
あたしの脳も心も、ついて行けなかった。
スクリーン越しに見ているかのように錯覚してしまうほど。
「カケルくん…。
本当、マナには勿体(もったい)ない彼氏だわ。
良いわよ、カケルくん。
マナのお父さんには、上手く言っておくわ。
わたしたちには言えないことも、
きっとカケルくん相手なら言えるでしょうからね。
カケルくん、マナをよろしくお願いします」
「お任せください、お母様」
お母様と呼ばれ、照れくさそうに「お世辞が上手いわ」と笑うお母さん。
「本当のことですよ」と屈託ない笑顔を浮かべるカケル。
あたし抜きで会話を進められ、放心しているあたし。
どうしてあたし、カケルの音楽プレーヤーの中身を、
知りたいと思ってしまったのだろうか?
どうしてあたし、カケルと付き合ってしまったのだろうか?
様々なことを、後悔した。


