「おかっ……さ…ん……」
お母さんが仕事から帰ってきたんだ。
そういえば出掛ける時、
今日欠席のあたしが心配だから、早めに帰るって言っていたっけ。
あたしは涙が出るほど、お母さんの帰宅に感謝した。
「……マナ」
いつの間にか、ナイフを仕舞ったカケルは、いつものように微笑んだ。
あたしの大好きなカケルに、戻っていた。
「お母さん、挨拶してきて良いか?」
「えっ?」
「ほら。
俺マナと付き合っているのに、無断で家に上がりこんでんじゃん。
挨拶ぐらい、しておかねぇと」
ニッと真っ白な歯を見せて笑うカケル。
あたしは何も言わず、頷いた。
トントン、と1階へ続く階段を下りる。
お母さんは、リビングにいた。
もしカケルのことを知らなかったら、
お母さんに会わせるの緊張していたはずなのに。
今はもう、緊張していない。
底知れぬ安心感が、あるだけ。


