Black sweet ・Canelé カヌレ

第1巻 ブラックスゥイート・Canelé カヌレ
夏雲のように

Prologue プロローグ

 僕は、念願の高校に幼なじみと共に受かった。
 入学式の6日前、僕はある河川敷の公園でアルトサックスの音色を耳にする。そこにいたのは、金色の髪を後ろに束ね小柄で、まるで妖精のような女性だった。


 彼女の奏でるアルトサックスの音色は、僕の心を今までにないくらい揺さぶった。僕は、およそ1年と3ヵ月の間、彼女に一方的な恋をした。


 彼女の奏でる音色は、どこか切なく悲しい。想えば、想うほど、彼女の苦しみが僕に伝わってくる。


「告白」彼女のある一面を目にした僕は、自分の不甲斐なさを思い知る。もう一人の心の声と共に。


 そんな想いの中、両親は、僕一人を残してこの世を去った。

 引き取り手のない僕を「Cafe Canelé カヌレ」のオーナー兼パテシェの彼が身元を引き受けてくれる。だがそこは、僕が想いを抱く妖精のような彼女の家だった。


 運命、この言葉はいたずらの様に僕を新たな生活へと導く。


 彼女と一つ屋根の下、僕の心はもどかしく揺れ動いた。
 


 とめどなく、流れる雲の様に。


Contents

I. その妖精は・・・
II. 日常との別れ
III. ペパーミント・フラッシュ
IV. Owe it to the wind --風に任せて--



I begin now Love story


 「ブウゥン、ブウゥン」

 「まったくさっきからうっせいなー」


 マナーモードにしているスマホが鳴りやまない。

 「なんでこんなしらねー番号から何回もくるんだよ。まったく、変なのにかかわるのはごめんだぜ」


 イライラしながら スマホの電源をおとした。




 これから、自分におきることがらを予想すら出来ずに・・・