「私の事は、どんなに悪く言っても構わない。皐月のことを悪く言うなら……私は、許さない」
私が睨みながらそう言うと、西原は私の襟元を掴んで、無理やり立たせた。
「何、彼女ヅラしてんの? 虫唾が走るんだけど」
そう言うと、西原は思い切り手を振り上げた。
私は、ギュッと目を閉じる。
――バチンッ
そんな音が聞こえるものの、私には、一切衝撃が来ていない。
「いってー」
「なっ、どうして……っ」
西原の焦った声が聞こえてくる。
私がゆっくり瞼を持ち上げていると、とても聞き慣れた声が、頭の上から聞こえてきた。
「虫唾が走るのは、お前らの行動なんだけど」
目を開けた私に、はじめに飛び込んできたのは、皐月の背中。
「……皐月」
「どう……して……」
西原は、力を込めていた手を、急に離したせいで、私は倒れそうになる。
皐月は、そんな私を、優しく両手で抱きとめた。
未だに驚いている私に、皐月はニヤリと笑って
「待たせたな。迎えに来たぞ」
そう言ったのだった。


