「…白血病…?」
「それがこころの言ってる悪魔」
どくんと心臓が大きく揺れた。
まだ話は始まったばかりなのに、もう頭の奥が痺れてきた。
まって…それじゃあ、心ちゃんが…
「こころ、白血病なんだ」
うそ…。
なんで心ちゃんが白血病なんかに…。
「そんな………」
「だからこころ、大きな病院に入院しなきゃなんない。そこが、今住んでるところよりも遠いの」
「でもっ!毎日がダメでも週一とか1ヶ月ごとくらいでなら優だって来れるよ⁈それにメールや電話もある!!」
わざわざ別れることなんて…。
心ちゃんは静かに首を振った。
「日に日に弱っていく姿なんて見られたくないよ…」
心ちゃん…。
「治る可能性だって…あるんでしょ…?」
「あるよ。ちょっとだけ、ね」
「……ちょっとだけ……」
「だからこころは優と別れる。優にこんな大きな心配はかけたくないの。こころは、病気が治らなかったら死んじゃうかもしれない。もうそうなったら心配をかけるどころじゃない。迷惑になるかもしれない」
迷惑になんてなるわけないのに…。
私は何も言えずに、
ただただ淡々と悲しげな瞳で続ける心ちゃんを、見つめることしかできなかった。
「…こころがもし死んだとしたら、優はどうなるんだろう。こころのために泣いてくれるのは嬉しいよ。優は私のことを本当に好きでいてくれてる。それは痛いほど伝わってくる。…でもね、そのせいで優の将来に支障が出たら?そんなのいやだ」
…そこまで考えてるんだ、心ちゃん。
私だったら、きっと自分のことで精いっぱいだよ…後のことなんてきっと考えれない。
「優に私の死に顔なんて見せたくない。そんな記憶、刻んで欲しくない。最悪な奴だって思われてもいい。今のうちに、縁を切っておきたい。別れるのに2人とも傷つかない方法なんてないと思う」
一息ついて、心ちゃんは続けた。
「嫌われてもいいから。私は優を突き放すって決めた。それが私の優しさなんだって思うことにする。優はまだまだこれからだし、きっと、私以外にも本気で好きになれる人が出来るはず。その幸せを大切にしてほしい」
そう言って、目を細めて微笑む心ちゃん。
私の頬に涙が伝った。