「貴臣さんったら、お仕事から帰ってきたばかりなのに、お戯れが過ぎますよ」

「戯れているんじゃない。俺は真剣だ」

「真剣ですか」

「ああ。真剣にお前限定で変態だ……ほぐぁっ!」

 膝蹴りがもう一撃来て、俺はもう一度お花畑まで飛んでいった。けれどもやはりピンクの(以下略)




「それじゃあ、ご飯から頂こうかな」

 痛みでボロボロ涙を零しながらそう言うと、妻はにっこりと微笑んだ。

「分かりました。今日は珍しい食材が手に入ったので、はりきって作ったんですよ。さあ、手洗いうがいをしてきてください」

「ああ」

 多少の痛みを残しながらも、何事もなかったかのように洗面所へ向かい、手洗いうがいを済ませてからダイニングへと入った。

「今日のご飯はなんだい?」

 4人掛けのテーブルに視線をやると、なんと、巨大な豚の丸焼きがどん、と鎮座していた。

 いや、よく見れば豚ではない。

 なんだろう。豚に良く似てはいるけれど、背中に羽みたいなのがついている。

「これは?」

「ブヒブーヒという生き物だそうですよ」

「……なにそれ」

「私も初めて見ましたので調理法が良くわからなくて……とりあえず焼いてみました」

 とりあえず丸焼きって。繊細そうな外見の割りに、男らしい豪胆さを併せ持つ椿姫らしい、豪快な調理法だ。

 でも丸焼きにされたブヒブーヒは、香ばしい匂いでとてもおいしそうだ。

「卵も無料で手に入りましたので、かに玉にしてみましたよ」

 ブヒブーヒの丸焼きの隣に、更に大きな皿に大量のかに玉がどん、と置かれた。その横には普通の卵の3倍はありそうなゆで卵が乗った山盛りの野菜サラダと、生春巻きらしきものも並ぶ。