「いてっ、いてっ、こら勇者! お前は王子である俺をないがしろにし過ぎだ!」

 首根っこを掴んで走っていたので、王子は体の前面を瓦礫にぶつけながら引き摺られていました。

「……そうですね、申し訳ありません」

 私は素早く王子を背負いました。けれども如何せん、私の身長に王子の身長は有り余ってしまいます。顔は上げられないし、無駄に長い手足が邪魔で走りにくいのです。

 ですから私は、王子を姫抱っこすることにしました。幸い勇者特典で力もついていますし、問題ないですね。

「……こ、これはこれで……なんか、俺のプライドが傷つくんだが……」

「文句があるなら降りてください。置いていきますよ」

「すまん、よろしく頼む」

 王子は私の首にしっかり腕を回してしがみつきました。

 その後ろからは魔王ではなく、手下の狼さんたちが追ってきます。後ろからだけでなく、左右からもやってきています。相当な数です。魔王にはたくさんの部下がいるのですね。

「回り込まれるぞ!」

 王子の声に、私も周囲を確認します。このまま全速力で駆け抜けても囲まれそうですね。

 ならば。


 私は左手に持っていたもうひとつゴミ袋を、えいやっと後方へ投げ捨てました。びゅーんと勢い良く飛んでいったゴミ袋は、手下たちの足元に着弾、大爆発を起こしました。

「き、きのこ雲……」

 私の首にしがみつく王子がぶるりと震えました。

 ゴミ袋は核爆弾並みの威力だったようです。