それから並河君は画家として仕事に復帰し、海外と日本を行ったり来たりする忙しい生活に戻った。私をモデルに絵を描いたことで創作意欲が戻ったとのこと。
彼の絵はいい意味で変化し、世界中から素晴らしい評価を得た。
私との関係がそうさせたのだと並河君は言った。
そういう部分も少しはあるかもしれないけど、それは並河君の才能があってこそ取り込め表現できたこと。才能が深まった何よりの証であり、全ては彼の実力。私はそう思っている。
それでも、もしまた並河君が創作に行き詰まることがあったら、私は何度でも体を張りたい。
休暇をもらっていた時ほど頻繁には会えなくなったけど、メールは毎日しているし、時々スマホやパソコンで顔を見ながら話しているので、全然寂しくなかった。
掃除と息抜きを兼ねて、私は週に一度マンションに足を運んだ。並河君がいなくても。
優人や義家族との関係は相変わらずそのままで、特に良い変化はない。顔を合わせば子供を産めと言われるし、嫌味や小言のうるさい義親にしょっちゅううんざりするけど、前ほど身構えることもなくなったし、適当な返事で流せるようになった。
きっと誰もが、認められたいと思って生きている。義親も。優人も。私も、そう。
一生好きになることはできないけど、そう思うことで義家族の言動を理解できるようになった。
美季も、きっとそう。自分の幸せのために、今も必死にがんばっている。
羽留は、並河君の仕事復帰をとても喜んでくれた。今も羽留は、パート勤務のかたわらピアノ講師の仕事を大切にしている。


