「その絵、どうするの?」
「大事に飾るよ。他の人には見せないけどな。タイトルは『フローライトの誓い』」
本来、芸術品は人に見せて価値がつくもの。並河君は、私の絵をそういう風に扱いたくないと言った。
「極上の芸術作品だ。これ以上美しいものは描けないと自負してる。でも、芸術家である以前に、俺は男だから。好きな人のことは全部独り占めしたいし、詩織の肌を誰にも見せたくない。たとえ絵でも」
「……うん。私も、キャンバスの中で抱かれるのは奏詩だけがいい」
「会いたくなったら、この絵を見るよ」
「いつでも私を思い出してね」
「もちろんだよ」
「これからも、こうやって抱いてくれる?」
「抱かせてほしい。俺の人生に、他の人はもういらないから」
並河君は私を抱き寄せ、私の髪を指先ですくように撫でた。
「どんなに悩まされても、いつも変わらず詩織を愛していたい」
「セッベンクルデーレの歌詞…?」
私達の関係を後押しするため、羽留が高校の頃ピアノで弾いてくれた曲。
「あの時、羽留と初めてケンカしたの。奏詩と仲良くする羽留にヤキモチやいて……。恥ずかしいよね。ホント、私はちっちゃいな……」
「ちっちゃい詩織も好きだよ。あの頃から、久野さんはずっと俺達の応援をしてくれてたんだな」


