「……もう! こっちは真面目なの。冗談はやめてっ」
「からかったつもりないよ。本気。詩織にはどんな自分を見せても大丈夫って信じてる。だから詩織も見せて? こぼさず受け止めるから」
大切な宝物を見つめるように、並河君は私を見た。
「横向きに寝そべってみて。手はここで、足はこう」
ポーズの指示をしながら、並河君が私に触れる。肩に足。触れる時間は一瞬で、その手にはいやらしさなど全くなかったのに、お腹の奥がキュンとなった。
「……くすぐったいね。ふふっ」
恥ずかしくて、思わず笑ってしまう。並河君はわざとらしく咳払いをし、キャンバスの前に戻った。その頬は今まで見たことがないほど紅潮していた。
並河君は、私を見てどう思ってるだろう。秋月さんに比べてスタイルも良くないし、とてもモデルになる自信はない。
「寒くない?」
「大丈夫」
「ならよかった」
「暖房効くの早いね」
「強めにしてあるから」
はじめは照れてうつむき、なかなか筆を動かさなかった並河君も、何かを覚悟したように私を見つめ、雑念を振り切るようにキャンバスに視線を集中しはじめた。


