「あまちゃん。さっきはごめんね。冷静になって、家でちゃんと話し合お?」
ああ、そっか。アパートを飛び出す前、私は猛烈に怒って泣いていたんだっけ。数時間前のことなのに、遠い昔の記憶に感じた。
「うん。話し合いしないとね。私こそ勝手に飛び出して心配かけてごめんね」
「あまちゃん……」
私が落ち着いているのが予想外だったんだろう。優人は私の反応に驚きと喜び、半々の顔をする。
話している私達夫婦の横では真逆の雰囲気が流れていた。並河君が秋月さんに別れを告げたからだ。
「結婚はできない。別れてほしい」
「やっぱりそうなんだ……。詩織さんと奏詩は何かあるんでしょ!? さっきだって、旦那さんがいるのに詩織さんを追いかけた! 奏詩が忘れられない人って詩織さんのことなんでしょ? はっきり言ってよ!」
「はっきり言うも何も、詩織とは同級生だって何度も言ったよな。今もそう。同じ高校のよしみで彼女の話を聞いてただけだ。あんな状態の彼女を一人で出歩かせてた方が問題あると思うけど?」
並河君は、あらかじめ考えていたセリフで秋月さんをなだめようとした。私達の秘密を守るために。
「お騒がせして本当にすみませんでした」
私も、一応秋月さんに謝った。心からの謝罪ではない。並河君とセカンドパートナーでいるためなら、こういうことも平気でやれる。


