セカンドパートナー


 そんな関係を、積極的に肯定してもいいのだろうか?

 並河君は私に着せている上着のポケットからキーケースを取り出し開くと、そこから1本の鍵を外した。

「これ、詩織に持っててほしい」
「もしかして、アパートの合鍵……?」
「それとは別にマンション持ってる。そこの鍵なんだ。詩織専用」
「知らなかったよ、マンション持ってるなんて……」

 並河君は昔と変わらない感じで話すのであまり意識していなかったけど、彼は世界の人々の心を打つ絵を描く。揺るがない実力がある芸術家。

 マンションを買うなんて安月給の私には縁遠い話でビックリしたけど、お金を儲けるのは大変なこと。どんな仕事でもそう。学生の頃から身にしみていた。

 もちろん、並河君がお金目的で絵を描いているわけではないと分かっている。好きだから描いていた。結果としてお金や地位を得た。だからこそ、時には心ないことを言われて苦労したり腹が立ったこともあると思う。

 幼い頃から絵を描き続けた並河君の根性と才能を、改めて尊敬した。

「ありがとう。大変な思いして得たものだよね。失くさないよう大切にするよ」
「やっぱり詩織は詩織だな。簡単に俺の心を持っていく」

 並河君は、強く優しく私を抱きしめた。

「日本に居る時はアパートを使ってるし、マンションは買ったまま放置してた」
「そうなの? じゃあ、どうして私に合鍵を……?」
「マンションの鍵は、いつか心から好きになった人に渡すって決めてた。結婚後の新居として」

 それって……。

 並河君の言葉に、胸が甘い音を立てた。全身が熱くなる。