セカンドパートナー


 並河君の返事を待たず、私は歩き出した。今度こそ本当に、彼に決別するとかたく心に誓ってーー。

 涙が出た。悲しくないわけがない。

 並河君は人生の半分以上も親しかった人。

 あらゆる感情をありったけ注いだ恋の相手を失うのは、身を切られるような深い痛みを伴う。

 この命が終わる時まで並河君を愛したかった。

「生半可な気持ちで連れ出したんじゃない!」

 並河君は背後から私を抱きしめた。抱きしめる腕はやっぱりあたたかくて、期待通りに心を包んでくれる。

「簡単に捨てられる想いなら、もうとっくに他の人と結婚でも恋愛でもしてる!」

 私も同じだよ。泣けるほど好きになったのはあなただけ。自分が思う以上に深くて底の見えない感情だった。

「不倫は罪だよ……。独身の身で失恋から逃げて他の人を見るのとはわけが違う」
「不倫じゃない。詩織と俺はセカンドパートナーになるんだ」
「セカンドパートナー……?」

 ネットサーフィンをしていて、見たことがある。

 セカンドパートナーとは、既婚者が結ぶ配偶者以外の特別な異性関係のこと。

 体の関係を持たない。カフェで話したりショッピングしたり映画を観たり、恋人のようなデートをしつつも手をつなぐだけのプラトニックな間柄。いってもキスまで。それがセカンドパートナー。

 不倫のような後ろめたさがないので、はたから見たら異性の友人同士にしか見えない。堂々と公共の場で会える関係。

 それでいて、当人同士は恋愛感情で結ばれているという、今まであまり聞いたことがない不思議な人間関係の在り方だ。