セカンドパートナー


「詩織さん、ご両親への挨拶に関してアドバイスとかない? 結婚生活のベテランさんとして!」

 なにそれ、嫌味?

「手土産持ってって礼儀正しくしてればいいんじゃないですか」

 思ったより投げやりな言い方になる。言った後、しまったと思った。変に思われる。

 気持ちが荒れてイライラする。かなり飲んだのにどうして? ……まずい。頭がちゃんと回らない。

 秋月さんは戸惑ったように笑みを浮かべ、話を合わせてきた。

「そうだよね、手土産は基本だよね。他には? 結婚したら、奏詩のご両親は家族になるわけでしょ? 仲良くできるコツとかってあるかな?」
「そのままで大丈夫ですよ。秋月さん、教室でも年配の生徒さん達に人気ですし」
「そんなことないよ〜。これでも詩織さんの見てないところでしょっちゅう怒られるんだよー?」

 白々しい。謙遜って丸わかりだよ。ああ、もう嫌だ。帰っていい?

「奏詩はきっと優しいご両親に育てられたんだろうね。私も仲良くなれるといいなぁ。高齢出産になっちゃうかもしれないけど、それでもいいから、奏詩と一緒に子供を可愛がって幸せな家庭を作りたいなぁ」

 秋月さんのセリフに追いつめられる。我慢の限界だった。

 全身の血が逆流するようだ。顔が熱い。

「幸せそうでいいですね。そんな夢みたいなこと言っていられるのは今のうちだけですよ。そんな能天気なことばっか言ってたら現実が嫌になってすぐ投げ出しちゃうかもしれませんね」

 気付くと、口に出していた。