「大丈夫だよ。よく振られる話題だし」
並河君には笑顔で答え、ひたすら飲んだ。
どんどん気持ちが暗くなっていく。明るい気持ちに戻れるよう、無心でお酒を喉に流し込んだ。
ダメだ。全然テンションが上がらない。
「私、酔うと変なこと言っちゃうの。詩織さんも、優人さんも、本当にごめんね」
上目遣いで謝り、秋月さんは言った。
「ずっと子供がほしいと思ってたの。奏詩との結婚が決まって、その夢がやっと叶うと思ったら、気持ちが高ぶってつい……。悪気はないの。信じて?」
「気にしないで下さい。願いが叶ってよかったですね」
そう言いつつ、優人の顔は寂しげだった。秋月さんみたいな人と結婚したかったと思った?
気持ちがますます重くなる。
本当に悪気はないの? わざと子供の話題を出しているんじゃない?
秋月さんの言動を深読みしてしまう。
「詩織、もうそのくらいに…!」
「ありがと。でも平気。優人の実家でこれ以上の量飲んでるから」
並河君には止められたけど、無視して手酌をし、秋月さんに警戒しながらお酒を飲む。早く帰りたい。
「奏詩は仕事のことも理解してくれるし、応援もしてくれる。私も彼の支えになりたい。だから、結婚が決まって本当に嬉しいの。親も奏詩のこと気に入ってくれて……」
へえ。そうなんだ。
「奏詩のご両親にも今度挨拶に行くの。こういうの初めてだから緊張するなぁ。奏詩自身もなかなか実家に帰ってないし、私も彼のご両親にはまだ会ったことなくて」
きっと気に入られるよ。私と違って魅力的だから。


