「香織、それは……!」
それまで香織さんが何を言っても平静を保っていた並河君もうろたえた。
「綺麗でしょ? 古びてるけど」
「どうして!? アパートに置いてあったのに……!」
「隠すようにしまってあったよね。奏詩の宝物なんでしょ? だったらここに置いておいた方がいいじゃない。しばらく泊まっていくんでしょ?」
「だからって、勝手に……」
「別にいいじゃない!」
秋月さんが興奮気味に怒鳴った。怖さでドキッとした。優人も私も、驚きのあまり同時に箸を置いた。
「ごめんなさい。酔ってるみたい」
秋月さんはすぐに穏やかな顔に戻り、そして、私達夫婦に告げた。
「私達、結婚することが決まったの。新居が決まるまで二人でここに住もうって話になって。もともと合鍵はもらってたから、奏詩のアパートから少しずつ彼の荷物をここに移動させてたの」
「自分でやるから勝手に触らないでって言ったよな」
並河君は言い、うつむいた。
「そうなんですね。結婚、かぁ……」
うまく笑えない。
いつかこんな日が来ると覚悟していたはずなのに、受け止める勇気が全然湧いてこない。


