並河君は鍋を見やった。
「香織、その白菜もういいんじゃない?」
「ホントだ、トロトロになってる。火、少し弱めよっか」
並河君に言われるまま白菜を取ったものの、秋月さんは話をそらさなかった。
「奏詩、詩織さんと再会した時、詩織さんのこと呼び捨てしてたでしょ? だから、もともと仲良かったのかな〜、なんて」
鈍感な優人も、さすがにこのセリフには何かを感じたらしい。
「あまちゃん、ホントは並河さんと友達だったの?」
「まさか。並河君は高校の頃からそうなの。フレンドリーだから、顔見知り程度の相手でも呼び捨てする。深い意味なんてないよ」
「ま、そういう人ってけっこういるしね」
とっさについたウソ。
信じたのは優人だけだった。
適度に食べつつ、水のようにお酒を飲んでいるけど、全然酔えなかった。まずい。アルコールが足りない。
「あまちゃん、ペース速くない?」
「そうかな?」
優人に心配されても、飲むのをやめられなかった。もう少し。あと少しで酔えそうな気がする。
「すごーい! 詩織さん、意外とお酒強いんだね〜。もっとどうぞ」
秋月さんはニコニコと私のグラスにお酒を注いだ。そして、彼女はいったん席を離れ、奥の部屋に入っていった。


