鍋の用意はすでに整っており、後は私達が持ってきたお酒を開けるだけだった。
「ありがとうございます。本当にすいません、何から何まで用意してもらって……」
「いいのいいの。今日は詩織さんが教室に来てくれたことをお祝いする場なんだから。楽しもうね。さ、乾杯しよ」
秋月さんの方ばかり見るようにした。さっきのことを意識してしまい、並河君の顔は見れなかった。
いけない、ちゃんとしないと。
秋月さんはああ言ってるけど、本当は絵に行きづまった並河君を元気づけるために設けられた場。彼の気持ちを和ませられるよう、私も出来ることをしたい。
「詩織さんが教室の生徒になってくれたことを記念して、乾杯!」
秋月さんの声かけで、皆がグラスを鳴らしあった。
そういえば、こんな風に並河君とお酒を飲んだこと、今まで一度もなかったな。
「今日はちゃんと食べてね」
秋月さんは言い、並河君の分を盛り付けようとする。
「いいよ、自分でやるから」
「もう……。ちゃんと食べてよ? ねえ、詩織さん知ってる?」
はい!?
急に話を振られ、あわててグラスから口を離した。
「奏詩ね、しっかりしてるように見えるでしょ? でも、普段の食生活はズサンなの。仕事中は特に」
「そうなんですか……?」
「夏はアイス。冬は中華まんばかり。どう思う? 体が資本なのに、これじゃ栄養偏るよね」


