そのうち義弟の妻になるチハルちゃんのことを、反射的に思い出した。天然か計算か分からないが、チハルちゃんも、
「パパ大好きー!」
そう言い、義父に抱きついたりする。そういうところを初めて見たのは、去年の法事の前日、義家族で夕食を食べていた時のことだった。
彼女は20代だし、まだまだ10代の気分が残っているのかも。自分の子供を抱きしめる、そういう感覚なんだ。細かいことを気にしないノリのいい子なんだろう。うん。
……そう思おうとしたけど無理だった。正直引いた。気に入られたいのは分かるが、婚約者の父親にそこまでする?
私がチハルちゃんと同い年の頃、義父にそんなことはできなかったし、しようとも思わなかった。いくら気を許しているとはいえ、男の人相手にそういうことを軽々しくする気が理解できない。
あれは、優人と付き合う少し前。
当時付き合っていた他大学の彼氏の家に、いつものように遊びに行った。彼はコンビニに行くといい、少しの間外へ出た。そういうことはよくあった。
彼の部屋でケータイを見ながら待っていると、一人で家にいた彼の父親がふらりと現れ、突然抱きついてきた。
「前々から可愛いと思ってたんだよ。アイツには内緒で、しばらくこうしていてくれないか?」
なにこれ……。
抵抗したいのに、恐怖で声が出なかった。下手に抵抗したらもっと体を触られる。怖がったら逆に襲われるかもしれない。気持ち悪かったけど我慢した。
それを理由に別れを告げ、その彼氏とは別れた。別れ際、彼に散々罵られた。
「デタラメ言うな! ウチの親父がそんなことするわけないだろ!? だいたい、お前のことなんてはじめからたいして好きじゃなかった。すぐヤらせてくれそうだからテキトーに告っただけだよ! 期待ハズレだったけどな。お前みたいな、薄情で何考えてるか分からない女、一生誰にも愛されねえよ! 別れられてせいせいする! 今すぐ消えろや!」
付き合っていた時はそんな言葉遣いを一切しない優しい人だったのに、ここまで豹変するなんて。恐怖を感じた。


