菱田君、勘がいい。ドキッとしてしまう。
「いくら友達と付き合ってるからとはいえ、天使ちゃん並河と一緒に居過ぎだったでしょ? 彼氏がヤキモチ妬かないのかなーって、すごい不思議だった」
「そっか、菱田君はそう思ってたんだ」
並河君とは何でもないよ。ーー心の中で付け足した。
「そういえばアイツ、いまだにマフィン食べれないんだって?」
そういう細かい情報も、中学時代のツレとやらから入ってくるのだろうか。
「大学卒業するちょっと前だったかな。同じ中学のやつらが言ってたよ。並河、中学の同窓会で出されたマフィンことごとく拒否ってたんだって。匂い嗅(か)ぐだけでダメって言って、嫌そうに顔しかめるって話。ドーナツとかカスタードパイとか普通に甘い物食べれるのにマフィンはダメって変わってるよなぁって、皆で言っててさ」
刺さるように胸が痛んだ。それって、私が田中さんのマフィンを渡したのが原因……?
並河君の気持ちに気付かず、傷付けた。
それまで並河君はマフィンを嫌がっていなかったはずだから。
並河君がどれだけ私を想ってくれていたのか、改めて分かった。
「パパ、まだー?」
待ち疲れたらしく、菱田君の子供が退屈そうにブランコを揺らしながら声を上げた。
菱田君は、同級生の顔から父親の表情に戻る。
「ごめん。もう行くわ。普段仕事であんま遊んでやれてないんだよね。並河によろしく!」


