「菱田君……!?」
「久しぶり〜! 綺麗になったね、天使ちゃん」
「ありがとう。菱田君も元気そうだね」
高1の時、ベル番メモを渡してきた他クラスの人。あれ以来、廊下ですれ違っても話すことはなかった。
当然かもしれないけど、菱田君は初めて話したあの頃より落ち着きが出て、いい意味でくだけた口調になっていた。私も当時より自然に彼と話せている。
「天使ちゃんち、この辺なの?」
「ううん、仕事で来てるだけ。あの子、菱田君の子?」
「そ。もうすぐ6歳。奥さんに頼まれて子守中」
今、菱田君は幸せなんだな。よかった。
思い出したように、菱田君は言った。
「天使ちゃん、結婚は?」
「10年目になったよ」
「長! すげぇな。でも、さすがって感じ。並河と天使ちゃんは、そのくらい余裕で続くと思ってたよ」
「え……?」
菱田君の言葉に動揺した。私の結婚相手を、並河君と信じて疑ってないみたいだ。
「違うよ、並河君と結婚なんてしてない」
「知ってるよ。並河とは同じ中学だから、結婚してたらツレからそういう情報入ってくる。ごめんね、カマかけてみたかったの」
菱田君はイタズラな笑みを見せた。
「俺が天使ちゃんに話しかけた時から、並河って絶対天使ちゃんのこと好きだったでしょ?」
「そんなことないよ。どうして?」
「だって、仲良くするの思い切り阻止されたし! 気付いてなかったの天使ちゃんだけじゃない? 鈍そうだもんね」
「うん、分かるよ」
「ウソウソ、ジョーダン。ごめんね」
笑って、菱田君は言った。
「天使ちゃんさ、高校の時並河の友達と付き合ってたじゃん? でも、俺にはそう見えなかったんだよね。いまいちピンとこないっていうか」
「そうなの?」


