すでに交換しているとは言えなかった。
大学生活が始まって半年くらいが経っていた。呼び出したのに来なかった人の校章を持っていたって何の意味もないと思った。
そのまま捨てようかと思ったこともある。でも、結局捨てられなかった。みじめなのに、持っているだけで少しは幸せな気がした。
校章を交換することの意味を、並河君はきっと知っていた。
好きな人がくれた思い出の物を結婚後も身近に置くなんてよくないと思った。でも、実家に置いておくのは心もとなかった。そばに置いておきたかった。不純だろうか。
卒業式の日、並河君がくれた校章。
手に取り、涙が出てきた。
優人を起こしてしまわないよう、声を殺して泣いた。
さっき、優人といて穏やかな心持ちになれたのは、並河君との関係に終止符が打たれたことで結婚生活を本格的に受け入れはじめたから?
並河君と別れて悲しいのに、現実に納得しているから?
心の中には単語のピースがバラバラに散らばっていた。心を決めたいのに、ちっともひとつにまとまらない。
責任。結婚。身勝手。恋愛。初恋。現実。本音。
並河君がほしい。彼との会話は、間違いなく私を癒した。


