仕事の都合で一緒に夕食を摂れないというのもあるけど、最近まともに優人とコミュニケーションを取れていない気がしてた。
言い合い以外で、久しぶりに会話らしい会話をしたかもしれない。
これも、並河君効果?
義母と同じで、優人は物を雑に扱うクセがある。無意識なんだろうけど、決して丁寧に置いたり受け取ったりしない。レジでお金を払う時も小銭を投げつけるような落とし方で出すし、人から物を受け取る時も引ったくるように持っていく。
気持ちが落ち着かないから、もっと丁寧に扱って!
気にしないよう目をつむろうとしたこともあるけど、やっぱり無理だった。私はいつもそれが不快でうるさいくらいに指摘してしまう。
ここまで神経を尖らせてしまうのは物音に敏感なせいかもしれない。かつて体験した父の暴走運転や怒りまかせに物に当たる姿、その時の恐怖を無意識のうちに思い出す。
今夜も優人は、食べ終えた食器を落とすようにシンクに置いた。耳障りな音が気になったけど、悪気はないんだろうなと、理解する心持ちになれた。
久しぶりに優しい気持ちになれた分、並河君との別れも受け入れられる気がした。
一緒に眠るベッドの中、優人が隣で寝息を立て始めた時、こっそりベッドを抜け出して自分のチェストを開けた。
並河君との思い出の品が入った箱。
並河君が初めてくれたベル番の紙。美術科のアトリエで描いたと言ってくれたフルーツのスケッチ。何度かくれた数行の手紙。おばあさんのお屋敷の庭で取った紅葉の葉で作ったしおり。授業中に描いたというラフタッチな私の似顔絵。オススメの曲が入ったたくさんのMD。
そして、卒業式の日に受け取った緑色の校章。


